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アトピー性皮膚炎

犬と猫のアトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は若い犬にも猫にもよく見られる、とても痒い皮膚病の代表格です。

あまり年齢を重ねてから突然痒くなるのは、ほかの皮膚病を先に疑います。また、耳が痒いという症状だけが若い頃からみられるときもアトピー性皮膚炎の可能性があります。感染症を伴うことも多いので、細菌感染症やマラセチアなどがあれば、先に治療をします。

犬の場合

犬の写真

結構若い頃から犬では前足の先を舐めていませんか?目の周りや口の周りが赤くないですか?耳が痒いということはありませんか?

そんなときは犬のアトピー性皮膚炎の可能性があります。アトピー性皮膚炎は若い時に発症して、相当長い間症状が続くことが多いですので、痒みが少なくなり、しかも長期間にわたる安全な治療が必要です。

そのためには内服薬や減感作療法(注射)による治療もさることながら、環境や食べ物にも気を配り、適切なスキンケアをすることがとても大事です。スキンケアを十分行うことによってお薬を減らすことが可能かもしれず、長期に亘る、より安全で快適な治療を行えます。

猫の場合

猫の写真

首の周りを後ろ足で掻いてケガをしていませんか?舐めてお腹の毛がなくなっていませんか?太ももの後ろの毛が抜けていませんか?

このような症状があると猫のアトピー性皮膚炎の可能性があります。猫ではスキンケアは簡単ではありませんのでお薬による治療が主体になります。猫のアトピー性皮膚炎では、内服薬は長期にわたる安全性が高いので、多くの場合痒みをコントロールできるでしょう。

治療法

アトピー性皮膚炎に有効な動物用の医薬品はいくつか承認販売されており、それぞれの患者さんの症状に合った薬を用いります。また、なるべくお薬の量や回数を減らすために外側からの治療、スキンケアは同時に行います。

スキンケア

プレドニゾロン(副腎皮質ホルモン)

とても有効で値段も高くない優れた薬で、皮膚の炎症が強い時(皮膚の赤みが強い、腫れているなど)、痒みがとても強い時に短期的に用います。長期にわたって用いると高い確率で、全身に影響する副作用が生じる可能性があるために、症状をみながら慎重に用います。

副作用
尿が多くなる、尿路などの感染症が起きやすくなる、肝臓に影響が見られることがある、などがあります。
また、クリーム、スプレーなどのステロイド外用剤も有効で、内服や注射よりも副作用のリスクは少ないですが、長い間用いると脱毛や皮膚が薄くなること、感染症をおこすことなどがしばしば見られます。

シクロスポリン(アトピカ、シクロキャップ、アトモアチュアブル、シクラバンスなど)

シクロスポリンは犬と猫のアトピー性皮膚炎の治療薬として、世界的にもう15年以上にわたって使われている薬です。

カプセル剤、チュアブル、液体飲み薬などが発売されているので、飲みやすいものを選択するのが良いでしょう。最初は毎日1回飲まなければいけないのですが、症状が良くなると1週間に2回程度で維持することが可能です。約7割のアトピー性皮膚炎に有効とされ、長期の安全性も高い薬です。

副作用
3割程度に軟便などの消化器症状が見られますが、およそ2週間でほとんどは解消します。

組換えイヌインタフェロンガンマ(インタードッグ)

犬のアトピー性皮膚炎に有効とされている遺伝子組換えのインターフェロン注射薬です。72%のアトピー性皮膚炎の犬で痒みが半減するといわれています。

特徴は安全性が高いことが挙げられます。アトピー性皮膚炎ではサイトカインバランス(Th1/Th2)が異常であるということが言われています。これを是正することにより犬のアトピー性皮膚炎に有効と考えられています。最初は1週間に3回、2ヶ月目からは週に1回注射します。

オクラシチニブ(アポキル)

数年前からアトピー性皮膚炎の痒みを止める薬として、世界中で広く使われている標準的なお薬です。

主に痒みを止める薬なので、炎症を抑える力はステロイドなどに比べて弱いので、赤みが強い、痒みがとても強いなどの時は少し炎症がおさまってから用います。最初は1日2回、その後1日1回お薬を飲みます。

副作用
少ないですが、まれに皮膚の感染症が見られることがあります。

減感作療法(アレルミュン)

アトピー性皮膚炎の原因となる抗原(アレルゲン)の多くはハウスダストマイトであると考えられています。そのハウスダストマイトに対する反応を抑えるために少しづつ抗原を注射するのが減感作療法です。時間はかかりますが副作用がほとんど無く、安全で長期間行える治療法です。

この治療法はもう40年以上前から犬と猫のアトピー性皮膚炎の治療として、欧米皮膚科専門医の間ではスタンダードとして用いられています。具体的には抗体の検査をして、ある種のハウスダストマイトの抗原(Derf2といいます)に体が反応しているかをしらべます。

陽性のときは1週間に1回、低い濃度のものから皮下注射をいたします。およそ3ヶ月でこの治療法が有効かどうかを判断します。60〜70%の犬に有効です。有効であれば注射の間隔を空けることが可能です。